後世に残す知恵袋「渋沢栄一塾」
動画で学ぶ渋沢栄一と現代
第42回 三重県と渋沢栄一 第2話:ヤマモリ会長・四郷郷土資料館
2025年9月18日公開
三重県桑名市に本部を置く食品メーカー、ヤマモリ株式会社の三林憲忠会長は2021年に第19回渋沢栄一賞を受賞しました。渋沢栄一賞は事業の発展と社会貢献、そして渋沢の精神を受け継ぐ経営者から選定されます。ゼミ生たちは「現代の渋沢栄一」三林会長との対話を通して、企業経営のあり方や人格の形成について学びました。
次に調査に向かった四郷郷土資料館は、渋沢の支援によって三重紡績(のちの東洋紡)を創業した第10世伊藤伝七が、故郷である四郷村に役場として寄贈した建物を利用した資料館です。かつての四郷地域は代々伊藤家の先進的な事業によって発展した地域で、現在でも多くの歴史的資料が保存されています。中でも紡績業を興した第10世伊藤伝七と渋沢の関わりは深く、渋沢が地域に及ぼした影響を知ることができます。
第41回 三重県と渋沢栄一 第1話:伊勢神宮・御木本幸吉
2025年9月4日公開
慶應義塾大学の橋口ゼミは、渋沢栄一が地域に及ぼした影響を調査するため三重県を訪れました。
学生たちは、これまで渋沢の出身地である埼玉県深谷市での調査を行ってきましたが、全国的に残る渋沢の足跡をその地域の中で辿る初のフィールドワークです。
第1話目は三重県を代表する名所、伊勢神宮と津市をつなぐ参宮鉄道(現JR紀勢線・参宮線)の建設と世界ブランドのミキモト真珠を創業した御木本幸吉を援助した渋沢が、それぞれにもたらした影響と現在をゼミ生たちが報告します。
第40回 共創対談第6回 栄一翁を次世代につなぐ
2025年8月14日公開
今回の渋沢史料館の井上潤顧問と慶應義塾大学の橋口勝利教授の対談は、渋沢栄一という人物像に現代人が何を求めているかをそれぞれの研究から考察します。
かつて渋沢の事績は、経営・経済的側面によって捉えらていましたが、現在はその背後にある一貫した渋沢の理念、道徳観に注目が集まり混沌とした世相の反映と考えられています。
先が見通せない社会では、次世代の斬新な発想で渋沢栄一の理念を再構築し実践していくことに期待がかかります。
第39回 共創対談第5回「青年渋沢栄一の面影を求めて」:橋口ゼミの渋沢史料館調査
2025年7月31日公開
2025年6月慶應義塾大学の橋口ゼミ生は渋沢史料館を訪れ、青淵文庫や晩香盧、史料館本館の史料を調査しました。本館では閲覧者が、自分の年齢と渋沢栄一の年齢を重ね合わせて渋沢の事績を追体験することがでる常設展示「年齢ごとに渋沢栄一をたどる」を見学しました。
井上顧問と橋口教授の対談ではこの常設展示の意図に沿って、ゼミ生たちと同じ年齢の渋沢の歩みを振り返り、渋沢から学ぶ青年時代の生き方を検証します。
第38回 栄一翁の流儀「青淵論叢」第10話:克己心を修養した体験
2025年7月17日公開
克己心を身につけるためには「弱さ」の原因を知ることが必要です。橋口教授は人を「弱く」させる要因として「名利・嫌悪・苦痛」を挙げ、渋沢栄一の体験と照らし合わせます。
そのことによって渋沢自身が「弱さ」に向き合い、克服することによって信用を得た結果、数多くの事績を残すことができたと読み解きます。
そして克己心の修養は「青淵論叢」の骨子となる「志・独立心・バランス」に集約されます。
第37回 栄一翁の流儀「青淵論叢」第9話:堪忍強くなる様に修養した体験
2025年7月3日公開
渋沢栄一は、事業を成功させるためには人材の能力を活かすこと、そしてその人材を組織に協調させるためには「堪忍」が必要だと考えていました。
渋沢自身の経験から語るこの「堪忍」とは、自己を抑え込む消極的な態度ではなく、高い理想と価値観を持ち、より高い次元から物事を俯瞰することによって得られる自己本位的な思考に囚われない姿勢、対応能力だと言えます。
橋口教授は、渋沢の攘夷志士から実業家への転身の背後にある内面の変化を体系的に明らかにし、渋沢の青年時代の葛藤から得た学びを導き出します。
第36回 栄一翁の流儀「青淵論叢」第8話:叱言(こごと)の云い方
2025年6月23日公開
豊な日本を目指し、資金とともに「人材」を重視した渋沢栄一にとって、数多くの「叱言(こごと)」が必要であったことは想像に難くありません。
渋沢は「叱る」という行為には、相手に与える影響と意義が考慮されていなければならないとしてその方法を述べています。橋口教授はその真意として、「叱る」とは人と人との信頼関係を築き深めるものであり、渋沢が一貫して説く「信用」の重要性に帰結すると読み解きます。
第35回 栄一翁の流儀「青淵論叢」第7話:資本よりも信用
2025年6月5日公開
第34回「信用を得る人得ない人」では「信用」を一つの人格として考察しましたが、今回は「信用」が社会の中でどのような振る舞いをするのかに焦点を当てます。
橋口教授は、渋沢栄一が「信用」を重視する理由として、渋沢自身が説いた「道徳経済合一説」との深い関わりを指摘します。
安寧な真に「豊な社会」を成立させる「信用」の社会的役割と、その意義を考えます。
第34回 栄一翁の流儀「青淵論叢」第6話:信用を得る人得ない人
2025年5月22日公開
健全な企業経営の基本である「信用」。渋沢栄一が唱えた合本主義を実践するためにはこの「信用」が重要です。渋沢は信用を得るためには素直さと信念のバランス(中庸)によって「元気」を身につけることが必要だと語ります。
橋口教授は、この「バランス」と「元気」に込められた渋沢の意図を読み解き、価値観が多様化する社会の生き方を提案します。
第33回 栄一翁の流儀「青淵論叢」第5話:現代青年の短所と通弊
2025年5月9日公開
「青淵論叢」が刊行された昭和初期の日本は、先進国の一つとして数えられる経済力を持つようになっていました。経済社会が浸透してくると、渋沢栄一の理想とする社会づくりのための目的や理念を持たず、利己的な豊さを求める「現代青年」が台頭してきます。この若者たちの自己中心的な価値観を渋沢が憂いていたのは言うまでもありません。
橋口教授は、渋沢の次世代に対する叱咤激励の章である「現代青年の短所と通弊」のキーワードとして「焦り・卑屈・空想」を取り上げ、渋沢が求める若者像を提示します。
第32回 栄一翁の流儀「青淵論叢」第4話:立身出世の秘訣
2025年4月24日公開
誰もが「立身出世」することで経済的な豊さを得られる社会へと変貌した明治以降は、渋沢栄一が求める公益を目的とした人材と、出世欲を「独立自尊」の思想に転嫁し、その欲に突き進む人たちとの倫理的な素養に乖離が生じていたため、渋沢の懸念となっていました。
橋口教授は渋沢が説く「立身出世の秘訣」を理解するためのキーワードとして「磁石力」を挙げ、出世のために過剰な自己宣伝で社会へ働きかけるのではなく、実力と信用を蓄え社会の側から働きかけを得る「引き寄せる力」を身につけることこそが渋沢が説く「立身出世」であると読み解きます。
第31回 栄一翁の流儀「青淵論叢」第3話:堅固正当な目的を持て
2025年4月10日公開
渋沢栄一は、社会の営みに助力し平和で豊かにする実践は強い意志を持って行われるため、その目的は「堅固正当」であると説きます。「堅固正当」な目的は、実践する人がそれぞれの「天命」を求めることで得ることができます。
渋沢が自己の経験、成長によって目的と実践がどのように変化して「堅固正当な目的」を持つことになったのか、その経過を「理想・目的・実践」の3つのキーワードの相関から整理し、渋沢が求める目的の立て方を考えます。
第30回 栄一翁の流儀「青淵論叢」第2話:富者の要務
2025年3月27日公開
「青淵論叢」の本編はお金の本質やその使い方についての提言から始まります。渋沢栄一は「道具」であるはずのお金が、個人や企業の「資産」としてその多寡によって格差を生み、社会的、政治的な力に利用されていることを危惧します。
渋沢は、経済活動には個人、企業、社会との「繋がり」が重要であり、その経済的循環によって事業を実践することこそが永続的な企業経営を可能にする、またその利益は社会を豊かにすることに使われてこそ「善用」であると語ります。
渋沢が実業界で最初に手がけた企業が銀行であり、その役割を近代化の基礎とした理念はこの「富者の要務」に現されています。
第29回 栄一翁の流儀「青淵論叢」第1話:「青淵論叢」を読み解く
2025年3月13日公開
「青淵論叢」は、渋沢栄一の数多くの談話を長期間にわたり口述筆記した小貫修一郎が編集し、渋沢の米寿祝いとして昭和2年に刊行されました。「論語と算盤」からおよそ10年後のことです。
橋口教授は「青淵論叢」の前半を「人生論・教育論」、後半を「政治観・経済観」と大別し小貫の編纂意図を織り交ぜながら、渋沢の流儀をキーワードにして「青淵論叢」を深く読み解く鍵を提示します。
第28回 ”人間”渋沢栄一を探求する 第1話「『体感』する学びへ
2025年2月27日公開
今回は渋沢史料館顧問井上潤さんと慶應義塾大学教授橋口勝利さんの渋沢栄一対談の第1回目です。
井上さんは40年に亘り渋沢栄一研究を続けており、渋沢の膨大な史料を整理、分類し史料体系を構築し、ご自身が「出前授業」と称する積極的な講演活動をはじめ、毎月開催される「『論語と算盤』読書会」や地域商店街と連携した「渋沢栄一クイズラリー」を催すなど「論語と算盤」を社会に根付かせる活動を行っています。
橋口さんは綿紡績業を中心とした経済史と現代の地域経済を研究する過程で、渋沢の思想や行動原理に着目し、渋沢が影響を及ぼした経済社会が成立するそのプロセスを検証することで、現代社会の問題解決や社会進路への応用、展開を研究しています。慶應義塾大学橋口勝利研究会では、歴史研究に基づく地域活性化を研究課題に各地でゼミ生とともに活動しています。
その二人に共通する渋沢研究の立脚点は「人間」渋沢栄一の解明であり、「論語と算盤」の真の学びは渋沢の人間性に共感して、その思想を実体験することで得られるとしています。
第27回 深谷市活性化への挑戦:”渋沢栄一”をまちづくりへ
2025年2月20日公開
2025年2月10日深谷市役所で、慶應義塾大学橋口勝利研究会深谷渋沢班の研究成果が発表されました。橋口ゼミの学部生たちは「深谷市と渋沢栄一をテーマとした地域研究」として、1年間かけて深谷市の実地調査を重ね、地域活性化を研究してきました。 発表会では、深谷市内の商工業関係者、教育委員会、深谷三田会会員らを前にして人口、子育て、経済、農業、教育のそれぞれの問題を提起、そして問題解決のための提案が行われました。
第26回「論語と算盤」を生き方の指針へ:「論語と算盤」の読み方
「論語と算盤」シリーズ最終話 2025年1月24日公開
これまで「論語と算盤」は、ビジネス書という捉え方が一般的でした。しかし、近年は「生き方」の指南書として見直される研究が進んでいます。
橋口教授は、渋沢栄一の論説に表れるその人間性と現代に再評価される意義に着目し、「論語と算盤」が読み継がれる背景には、いつの時代にも渋沢が説く忠恕の心を希求する人々の存在があり、渋沢から学んだその人自身が、移り変わる年代ごとに学び直し「論語と算盤」を後世に伝える必要があるのではないかと解説します。
第23回「論語と算盤」を生き方の指針へ: 第10章 成敗と運命
「論語と算盤」シリーズ第11話 2025年1月16日公開
人生の成功と失敗やその評価は、その人が置かれた状況や多様な価値観、社会や自己の時間的変化などによって定めることが難しいと言えます。
渋沢栄一は、仕事や活動の評価(結果)を求めるのではなく、その過程に良心を伴っているか否かを問い正すことが重要だと語ります。
橋口教授は、良心や道理に従う仕事とは、自己の社会的役割を「見切り」それを実践することであり、その活動は個人と社会が喜びや幸せを共有することができる社会的仕組みの基礎であり「論語と算盤」の真意であると論じます。
第24回「論語と算盤」を生き方の指針へ: 第9章 教育と情誼
「論語と算盤」シリーズ第10話 2025年1月9日公開
渋沢栄一は人材育成の指針となる「教育と情誼」の基本原理は、親孝行であると考えています。 渋沢の父市郎右衛門は、栄一の素質を見抜く力と、栄一の生き方を容認する寛容さがありました。栄一を偉人たらしめたその父の姿から、親孝行は子がするのではなく、親がするものであり、教育、人材育成においても同様に教育する側の情誼が、その教育、育成の結果を左右すると説きます。
第23回「論語と算盤」を生き方の指針へ: 第8章 実業と士道
「論語と算盤」シリーズ第9話 2025年1月3日公開
渋沢栄一は「論語と算盤」第8章で武士道とは、正義・廉直・義侠・敢為・礼譲であり、理想的な道徳指針だとしています。しかし明治維新により、それまで社会を統轄し、この指針の継承者である武士はその身分と誇りを失い、その一方で武士道から遠ざけられ、社会的道徳を持たない庶民による経済活動の拡大に伴って倫理的混乱が顕著化することになります。 渋沢は、「士道・武士道」の倫理を再評価し、その倫理を商業活動に適合させた道徳を呼び掛けます。
第22回「論語と算盤」を生き方の指針へ:第7章 算盤と権利
「論語と算盤」シリーズ第8話 2024年12月26日公開
渋沢栄一は1902年にアメリカ大統領セオドア・ローズベルトと会見し、日本の発展について賞賛を受けます。しかし、その賛辞に実業界が含まれていないことを懸念して「算盤と権利」を語ったと考えられています。 当時の日本の倫理観のない自己本位な商取引による、海外の事業者からの苦情を認知していた渋沢は、公正な商取引の基本である商業道徳を身につけてこそ、ビジネスを行う「権利・資格」を得ることになると説きます。
第21回「論語と算盤」を生き方の指針へ:第6章 人格と修養
「論語と算盤」シリーズ第7話 2025年12月19日公開
1910年代の日本は「一等国」として国際社会に認められつつありました。しかし渋沢栄一は日本人の「人格・品格」が、その評価に値しているのだろうかと問いかけます。
渋沢は見習うべき人格者として西郷隆盛を例に挙げ、その一方で先進国でありながら移民排斥を推めるアメリカの「品格」を欠いた国政を批判して、経済と道徳の統一に基づいた一等国の品格を説きます。
「人格・
品格」は「修養」をもって身につけるものであり、その努力の過程で自己の目的や価値を見出していくことが、日本が国家としての品格を保つことになると渋沢は考えていたようです。
第20回「論語と算盤」を生き方の指針へ:第5章 理想と迷信
「論語と算盤」シリーズ第6話 2024年12月12日公開
論語と算盤第5章では、渋沢栄一が15歳の時に遭遇した、修験者による加持祈祷への「迷信」の実体を「客観的」に否定した経験を記しています。 この体験談について橋口教授は、渋沢が自己実現の性質を「主観」と「客観」に分別している点に着目して、当時の急激な価値観の変化や社会的混乱が伴う不安定な情勢に、さまざまな言説が入り込み、新たな「迷信」が醸成されることを牽制するために、渋沢が、現実に則した「客観的」な分析と理解を人々に求めていると読み解きます。
第19回「論語と算盤」を生き方の指針へ:第4章 仁義と富貴
「論語と算盤」シリーズ第5話 2024年12月2日公開
明治大正期の人々には「金儲け」を卑しい行為とする「賤商意識」があり、これは儒教的な考えとされていました。 ところが、渋沢栄一は、孔子は富や地位を得るためには「正しい方法」でなければならないと説いているのであって、富や地位を得ることを否定したのではないと解釈します。 その「正しい方法」とは道徳心に基づく社会的利益の追求であり、「仁義と富貴」は僭商意識の払拭と商業道徳の向上を目指した「論語と算盤」の第二の表現と言えます。
第18回「論語と算盤」を生き方の指針へ:第3章 常識と習慣
「論語と算盤」シリーズ第4話 2024年11月27日公開
「論語と算盤」が出版された大正5年は、近代化が進み、経済社会が充実しつつありました。しかし、人々の「常識」が「近代化」されていないことに、渋沢栄一は危機感を持っていました。
幕藩体制が崩壊し、西欧から「輸入」された国家という概念と社会構造を資本主義経済で成立させ、国の独立を目指すその大転換のためには、人々の社会認識を共通化させる必要がありました。
渋沢はその「常識」の本質は、「智・情・意」にあるとし、人々の目的意識を自己から社会に向けるべきだと説きます。
第17回「論語と算盤」を生き方の指針へ:第2章 立志と学問
「論語と算盤」シリーズ第3話 2024年11月16日公開
渋沢栄一が「立志」したのはいつなのか?「立志」とは何か?そこに備わるべき思想、理念とは?
生きる道を決したその分岐点を渋沢栄一自身が振り返り、生涯にわたって貫いた志の性質を明らかにします。
第16回 「論語と算盤」を生き方の指針へ:第1章 処世と信条
「論語と算盤」シリーズ第2話 2024年11月9日公開
渋沢栄一は、当時、時間さえあれば人と面会し、その人数は膨大だったと伝えられています。
そこから得られた「人」を見る力と渋沢自身の人生経験とを重ね合わせて、「処世」とその「信条」のあり方を説いています。
また、失敗や逆境に陥った時の対処、失敗しないための心構えについても言及しています。
第15回 「論語と算盤」を生き方の指針へ:概要
「論語と算盤」シリーズ第1話 2024年10月31日公開
渋沢栄一を代表する著書「論語と算盤」は、実業家渋沢の経済哲学の側面だけではなく、人としての生き方の指南書として読むことができます。
このシリーズでは、「論語と算盤」の章立てを橋口教授が独自に「全体テーマ」「準備編」「実践編」「総括編」と区分し、その区分を帰結として各章を順に読み解きながら、渋沢の想念したより良い生き方に焦点を当てます。
第14回 新紙幣への願い:「個」と「和」の時代へ
「独立自尊」の伝承シリーズ第9話 2024年10月24日公開
聖徳太子、福沢諭吉、そして渋沢栄一へと引き継がれた一万円札肖像画。
聖徳太子の「和を以て貴しと為す」を掲げた十七条憲法、福沢諭吉の「独立自尊」、渋沢栄一の「論語と算盤」、それぞれの思想を紙幣が発行された時代の変遷と組み合わせて振り返ることで、これからの時代に必要とされる「生き方」を探ります。
なぜ、渋沢栄一が新一万円札の肖像画になったのか。それは歴代の肖像画偉人の思想がその時代を取り込みながら結びつき、それを発展させるための新時代の要請なのかもしれません。
第13回「穿き違へ」の独立自尊:合本主義の時代へ
「独立自尊」の伝承シリーズ第8話 2024年10月18日公開
福沢諭吉が最も評価した実業家である岩崎弥太郎は、独立自尊の体現者でした。岩崎は自らが創業した三菱を日本経済の頂点に置くことで国づくりを目指します。
合本主義を唱える渋沢栄一とは対極の岩崎の事業哲学を継承する企業家たちに対して、渋沢は自著「福沢先生及び独立自尊論」の中で「穿き違への独立自尊」と称して批判します。
福沢の近代化思想に共鳴していた渋沢は「穿き違へ」という表現によって独立自尊を利己主義と捉える人々を牽制し、自己実現と道徳経済を調和させる理念を持つことを求めます。
第12回 新時代の経営者像:福沢諭吉と「士流学者」
「独立自尊」の伝承シリーズ第7話 2024年10月10日公開
福沢諭吉が「独立自尊」を唱えたその背景には、近世の慣習が残っている企業の在り方では、近代化を遅らせるという危機感がありました。
そこで福沢は「士流学者」と称する、新しい知識や技術を持った人材を企業経営の中枢に置くべきだと主張します。しかし「士流学者」として経営中枢を担うことができても、株主やステークスホルダーからの圧力に直面します。
ここに、渋沢栄一が唱える「合本主義」では解決しない企業組織の課題が浮かび上がります。 現代においても儒教的功利主義と独立自尊の「両立」が必要とされています。
第11回 資本主義への道標:儒教的功利主義
「独立自尊」の伝承シリーズ第6話 2024年9月19日公開
福沢諭吉は、「独立自尊」によって経済活動を活発に行い資本を蓄え、欧米列強の圧力に対抗できる国を創ることを説きます。
しかし国づくりという目的を離れた、利己的な利益追求が社会を崩壊させることを予見した渋沢栄一は、儒教的な道徳がその暴走を止められると考えていました。
経済史学者の由井常彦氏は、渋沢の経済と道徳の融合を「儒教的功利主義」と名づけました。そこにある「利益を得る」とはどうあるべきかという問いを基底に、現代経済社会に渋沢の理念を照らし合わせます。
第10回 独立自尊と近代:個人と社会
「独立自尊」の伝承シリーズ第5話 2024年9月11日公開
渋沢栄一と福沢諭吉の人間性や価値観を考えてきた今回のシリーズ第5話は、青森公立大学村田晴夫元教授の研究を参考に二人の哲学を考えます。
西洋的個人主義を掲げる福沢と、儒教を基礎に置く渋沢の価値観を理論的に分解して、現代人でも理解し易いその思考過程を導き出します。福沢の独立自尊論に共鳴しながらも「士魂商才」「道徳経済合一説」など独自の理念を唱えた渋沢の柔軟な思想からは、社会と人が豊かになる国を創るという強い信念が窺えます。
第9回 渋沢栄一と「忠孝」:福沢諭吉「舌禍事件」
「独立自尊」の継承シリーズ第4話 2024年9月5日公開
大正6年に渋沢栄一が語った「福沢先生及び独立自尊論」には、福沢諭吉と思想の対立が記録されています。その対立から垣間見えるのは2人の人間性と近代化への情熱です。
急激な時代変化の中で、偉人たちが拠り所にしていた価値観は現代にも通じ、人々の生き方への示唆に富む「対立」として受け止めることができます。
第8回 新時代への継承:郷土の偉人から日本のシンボルへ
「独立自尊」の継承シリーズ第3話 2024年8月30日公開
今回は、新一万円札発行に湧いた渋沢栄一「人気」を一過性で終わらせないために、坂本龍馬や西郷隆盛の事例と比較しながらその方法を探ります。
橋口教授は「混迷の時代」だからこそ、偉人の苦悩や怒りなどに着目し、そこに現れる人間性を時代背景や事績と合わせて多層的に理解することで、共感を深めることができるのではと提言します。
第7回 紙幣と時代:高度経済成長期から混迷の時代へ
「独立自尊」の継承シリーズ第2話 2024年8月21日公開
歴代の一万円札の肖像画の変遷と、変わりゆく時代を関連づけて振り返ることで、単なる「肖像画」だけではなく時代の「象徴」としてその存在が浮かび上がります。 日本経済の発展を信じていた時代から、混迷の時代に移りゆくこの現代に、渋沢栄一が肖像画に選ばれた意義と、どのような「象徴」として後世に伝えられていくかを考えます。
第6回 新紙幣への継承:新一万円札引継式
「独立自尊」の継承シリーズ第1話 2024年8月14日公開
東証アローズで行われた「一万円札引継式」は福沢諭吉、渋沢栄一それぞれの郷里の人たちの偉人に対する愛着と、二人が遺した理念を継承させたいという希望が契機となって行われました。 今回のシリーズでは、激動の明治期に鍛え上げられた思想「独立自尊」から読み解く渋沢栄一像と変化し続ける現代社会の指針となる根本理念を考えます。
一万円札の引継と承継
2024年8月7日公開
新札が発行された2024年7月3日に東証アローズで開かれた「新札発行記念・一万円札引継式」に参加した慶應義塾大学橋口ゼミの学部生たちの言葉から、福沢諭吉から渋沢栄一へと一万円札肖像画が引き継がれる意義を考えます。
第5回「独立自尊」の継承:新時代へのメッセージタイトル
渋沢栄一と福沢諭吉シリーズ第5話 2024年8月1日公開
福沢諭吉が唱えた「一身独立・独立自尊」に渋沢栄一は近代人のあるべき姿を見出します。しかし産業と資本経済の発達に伴い、独立自尊を権力増強や金銭的欲求を満たすための免罪符と捉える人々が現れ、渋沢はそうした個人主義を厳しく非難します。そして独立自尊とは、「謙譲」の心が内含されているべきであり、その東洋的な思想があってこそ、福沢が目指した近代社会が実現されると主張します。
第4回 立身出世の時代:福沢諭吉、渋沢栄一を評す
渋沢栄一と福沢諭吉シリーズ第4話 2024年7月25日公開
福沢諭吉が、渋沢栄一の人物とその業績を高く評価している時事新報の論説を引用して、当時の世相を交えながらその評価の要因を探ります。
第3回「独立自尊」の心得:福沢からの学び
渋沢栄一と福沢諭吉シリーズ第3話 2024年7月20日公開
福沢諭吉が説いた「独立自尊」。この言葉を渋沢栄一がどのように捉え、福沢諭吉その人をどう評価していたか考察することで、現代人にも大切な「心得」が託されていることが浮かび上がります。
第2回 新紙幣への継承
渋沢栄一と福沢諭吉シリーズ第2話 2024年7月13日公開
近代日本の指導者として同世代に生きた渋沢栄一と福沢諭吉。二人の繋がりを史料から紐解くことで、1万円券肖像画の継承の背後に垣間見える近代人からのメッセージを考察します。
第1回 近代偉人から何を学ぶのか
渋沢栄一と福沢諭吉シリーズ第1話 2024年7月9日公開
第1回目では、近代産業史をどのように捉えることが現代の学びになるのか、そして福沢諭吉と渋沢栄一の結びつきはどこにあるのかを解説しています。